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【インタビュー】「建てない一級建築士」が語る、心と家を繋ぐ心理学~まえうみさきこさん~

はじめに

NPO法人Miraikanaiがお届けするスペシャルインタビュー!今回は「立てない一級建築士」というユニークな肩書きを持つ、まえうみさきこさんをお迎えしました。建築と心理学を融合させたその活動の真髄に迫ります。

ゲストプロフィール
まえうみさきこ
ielie(イエリエ)主宰
心と居場所をデザインする​建てない一級建築士
住まい心理コンサルタント
・資格
一級建築士/インテリアコーディネーター/空間デザイン心理学®︎/ライフオーガナイザー(脳科学の整理収納)

公式ホームページ  https://www.ielie.net/
Instagram https://www.instagram.com/ielie.sakiko/


イ: まえうみさん、本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。まずは、リスナーの皆さんに、現在どのような活動をされているのか自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

まえうみ: はい、ありがとうございます。私は沖縄県で活動しており、建築に心理学を掛け合わせ、住まいに関する悩みや家作りのサポートを提供しています。自分で「立てない一級建築士」と名乗っていますが、これは家を建てられないという意味ではなく、今住んでいる家でも心理学を使えば様々な改善ができるという思いから作った肩書きです。

イ: その肩書き、とても興味深いですね!では、まず最初に、まえうみさんの子供の頃や学生時代に興味を持っていたこと、そして今の活動につながる原体験について教えていただけますか?

まえうみ: そうですね、現在の活動、特に建築関係につながる原体験はいくつかあります。まず、私の父が建築関係の仕事をしていたので、幼い頃から建物を建てる工事現場を見たり、工事途中の様子を見る機会が多かったんです。完成した建物も好きでしたが、工事中の「立つ様子」にとても興味がありました。

次に、母が歴史好きで、夏休みにはよく寺社巡りに連れて行ってくれました。普通なら遊園地などに行くところを、私たち家族は寺社を巡っていたんです。そこで見た昔の職人たちの、とても細かくて精巧な、釘を一本も使わない作りや職人技にすごく惹かれました。こういう建物を作れる人たちは本当にすごい、自分もこんなものに関われたら、と思っていました。地震の多い日本で倒れない建築物があることにも感動しましたね。これは構造力学が分かっていないとできないことですし、当時の技術でどうやって計算したのか、本当にすごいと思います。

そして、昔から絵を描くのが好きでした。文字で表現するよりも絵で表現する方が得意で、言葉にできない思いを絵にしていたんだと思います。デザインすることが大好きでしたね。これらの経験が合わさって、今の建築系の仕事に至ったのだと思います。

イ: そういった幼少期の経験が、今の活動の土台となっているのですね。社会に出て最初に選んだお仕事は何でしたか?

まえうみ: すぐに建設業に入りました。最初の配属は建築設計ではなく、実は営業部だったんです。当時、20年以上前に那覇で販売していた分譲の小住宅50棟に関わらせてもらいました。そこで住宅を販売する営業活動をしていました。

イ: 営業経験が今の心理学の活動にどう繋がったのでしょうか?

まえうみ: 個人事業主として活動するには営業が必要ですよね。モデルハウスでお客様と話す中で、私自身が人と話すことが大好きだと初めて気づいたんです。この気づきが、個人事業主としてもやっていけるという自信になりました。また、営業の視点を持つことで、設計だけの目線ではなく、どうしたらお客様に分かりやすく見せられるか、販売しやすくなるかという視点が身につきました。これは設計にも活かせる、現場と管理者の違いのようなものだと感じています。

イ: 営業経験が、その後のキャリアに大きな影響を与えたのですね。では、まえうみさんのキャリアにとって決定的なターニングポイントとなった出来事があれば教えていただけますか?

まえうみ: 決定的なターニングポイントは大きく2つあります。一つ目は、約20年前に「子供を歪ませる間取り」という本に出会ったことです。この本は、過去の凶悪犯罪者たちが幼少期に住んでいた家の間取りを分析したものでした。

この本を読んで、私はとても衝撃を受けました。それまでデザインやインテリアの機能性にばかり目が向いていたのですが、この本を読んで、幼少期の家の作りや空間、家族とのコミュニケーションが、間取り一つで良くも悪くもなり、子供の人格形成に多大な影響を与えることを知ったんです。自分が携わっている仕事が、もしかしたら人の人生を変えてしまう空間を作っているかもしれないと気づき、とても怖くなりました。それ以来、設計士をしながらも、家の中でどう過ごすとどのような人格になるのか、という心理学寄りの視点を持つようになりました。もっと色々なことを勉強して、住宅設計に生かしたいと強く思うようになりましたね。

二つ目のターニングポイントは、子供を産んだことと、コロナ禍での自宅自粛期間です。特にコロナ禍では、管理職として経験のない状況での判断を迫られ、ストレスから体調を崩してしまいました。これを機に一度リセットしようと思い、会社を辞めて独立を決意しました。それまでは新築の家が主な対象でしたが、独立後は「今住んでいる家の家具の向きを変えるだけでも、心理学的に家族のコミュニケーションが激変し、生活が大きく変わる」ということを伝えたいと思いました。ゼロからのスタートでしたが、誰にも知られていない分、何でも自由にできてやりやすかったですね。

イ: まさに人生の大きな転機が訪れたのですね。まえうみさんの現在の仕事の中で、たまらなく面白いと感じる瞬間や、一番のやりがいはどんな時ですか?

まえうみ: 一番楽しいのは、お客様が悩んでいるお家に入った瞬間です。その瞬間に、その家が改善されて、お客様が快適に住んでいるイメージが妄想で見えるんです。まるでディズニーランドに入った時のようにワクワクして、「こんなことができる!あんなこともできる!」と可能性しか見えません。

イ: そのワクワク感、とても伝わってきます。一方で、この仕事ならではの大変さや難しさはありますか?

まえうみ: この仕事になってからは、「きつかった」と感じることはないですね。自分でコントロールしているので、好きな仕事しか受けていないというのもあります。やりたくない仕事は、いくら頼まれても自信がないので無理なんです。自分が「力が発揮できる」と思う仕事だけを受けるようにしています。大変なプロセスがあっても、目的のためなら楽しみながら、寝ずにでも仕事ができます。

イ: 「ワクワク」が仕事の原動力になっているのですね。仕事をする上で、これだけは譲れないという価値観や流儀はありますか?

まえうみ: まさに今お話ししたことと繋がるのですが、仕事の話を聞いた時にワクワクできるかどうかを大切にしています。もしワクワクできなかったら、その仕事を受けても途中で後悔してしまうと思うんです。自分がワクワクするだけでなく、「この人のためにやってあげたい」という気持ちが湧いてくるかどうかですね。

実は、仕事を受ける前、まだ契約も交わしていない段階でも、話を聞いた瞬間にワクワクしたら、その日からもう仕事に取りかかり始めてしまうんですよ。他の仕事そっちのけで、夜中までデザインやアイデアを考え続けてしまうんです。時には、まだ依頼も受けていないのに、「こうなりそうだよ」と自分から提案を送ってしまうこともあります。お金のためではなく、楽しくて熱があるうちにそうした方が、きっと良い結果に繋がると信じています。

イ: その情熱、素晴らしいですね!キャリアを歩む中で道に迷ったり、立ち止まったりした時に立ち返る指針のようなものはありますか?

まえうみ: それもやはり「ワクワクするかどうか」ですね。ドーパミンが出るかどうかというか、心が動くかどうかが私にとっての指針です。

イ: まえうみさんのインスピレーションの源についてもお伺いしたいのですが、影響を受けた本や映画、人物などはありますか?先ほど「子供を歪ませる間取り」という本を挙げられていましたが。

まえうみ: 間取りの本以外だと、特に「これ」というものはないかもしれません。ただ、心理学に関する書籍、特に女性向けの優しい、癒しをくれるような心理学のタイトルを見ると、すごく心が動きますね。

あと、映画では**「エイリアン」や「プレデター」に出てくるクリーチャーの造形美**にとても惹かれます。気持ち悪く感じる人もいるかもしれませんが、私はあの複雑さや、口の中からまた別の口が出てくるような機能美、そして全体の完成度にとてつもない魅力を感じてしまいます。フィギュアではなく、映画の中のあの美しさに魅入られてしまうんです。もしかしたら、絵を描くのが好きだったこともあり、ああいう造形の道に進んでいた可能性もあったかもしれませんね。メイキングムービーを見て、どのように作られているのかを知るのも大好きです。私のテーマは「作る」なのかもしれないですね。

イ: まえうみさんの「作る」という魂が、多岐にわたる分野で表現されているのですね。では、最後に今後の展望についてお伺いします。今一番挑戦してみたいことや、将来達成したい大きな目標、あるいは個人的な夢などがあれば教えてください。

まえうみ: 目先のチャレンジとして、初めて家作りをする人たちのために、「家作りノート」という家作りの勉強ができるコミュニティを作りたいと思っています。今は情報が溢れすぎていて、家作りで疲れてしまう人が多いんです。私が情報をセレクトして、土地選びから何が必要かなどを分かりやすく用意することで、皆さんが楽しく家作りができるような勉強会や家作りノートを作りたいと考えています。

イ: それは素晴らしいですね!情報が整理されていれば、迷わずに済みますね。現在、その目標に向かって特に力を入れていることや準備していることはありますか?

まえうみ: 今、noteで家作りに関する情報を毎日地道に更新しています。年内の完成を目指しています。

イ: 年内ですか!すごいペースですね。この番組を聞いている方の中には、まえうみさんのようなユニークなキャリアに憧れている方や、進む道に悩んでいる若い世代もいると思うのですが、何かメッセージやアドバイスをお願いできますか?

まえうみ: はい、基本的なことですが、資格は取りましょう。特に建築士の資格は取るべきです。建築士の資格がないと家は建てられませんし、業界に入るのであれば基礎的な知識を学ぶことは必須です。資格があることで、周りの見方も全然違ってきますので、強くお勧めします。

そして、空間は人の脳と心に影響を与えます。家という空間には、悲しい気持ちや嬉しい気持ちが必ず関わっています。人間は一日のうち3分の1から3分の2もの時間を家の中で過ごしています。その家の中で、片付けでイライラしたり、子供を怒って悲しくなったり、パートナーとの関係で不満を感じたりと、ずっとネガティブな気持ちで過ごすのはもったいないですよね。

だからこそ、心理学を知って、家の中でずっと幸せでいられるような空間作りをぜひやってほしいと強く伝えたいです。

イ: まえうみさんの熱い思い、しっかり受け取りました。最後に、そのように心理学を使った空間作りをしたいと思っても、一人では難しいと感じる方もいるかと思います。誰に相談すれば良いでしょうか?

まえうみ: 沖縄では、私一人しか心理学を扱っている人がいないので、ぜひ「建てない建築士 まえうみさきこ」までご連絡ください。

私の活動やセミナーの情報は、タイムス住宅新聞で毎月第1金曜日に掲載しているコラムで確認できます。そこにQRコードで連絡できる案内があります。また、「ielie」というホームページも持っていますので、そちらからお問い合わせをお願いします。一番手っ取り早いのは「まえうみさきこ」でウェブ検索していただくことですね。

直近では、令和7年8月23日(土)にパナソニックでセミナーを毎月開催していますので、ホームページかタイムス住宅新聞でチェックをお願いします。

イ: ありがとうございます!リスナーの皆さん、まえうみさんの情報は「まえうみさきこ」でぜひ検索してみてください!本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!

まえうみ: ありがとうございました!またいつか来させていただけると嬉しいです!


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