今回は、NPO法人Mirai Kanaiがお送りする「ミラクルモンスター」のゲスト、レコーディングエンジニアの細貝知史さんにお越しいただきました。
ニートだった過去、持病との闘いを経て、今や音楽業界で活躍する細貝さん。その波乱万丈な人生と、現在の活動の原動力に迫ります。
ゲストプロフィール

細貝知史(ほそかい ともふみ)
音楽家、ペンギンレコード
東京都板橋区でレコーディングスタジオ「ペンギンレコード」を運営 。
レコーディング、ミックス、作曲、編曲、劇伴音楽制作、音楽教室など、音に関する幅広い活動を行う 。
- X (旧Twitter): https://x.com/zuttomohumi?s=21&t=2nPUu77QJ5x4Okl7nBUQAw
- Instagram: https://www.instagram.com/fumipeng?igsh=N3Q2enM0cHljaGQ0
音楽の原点は「性欲」⁉︎ 異色のキャリアの幕開け
イ: 本日はよろしくお願いいたします。細貝さんは現在、レコーディングエンジニアをはじめ、音楽全般のお仕事をされていますが、音楽との出会いはいつ頃だったのでしょうか?
細貝: 中学2年生の時、横浜出身のアーティスト「ゆず」に影響を受けて、母親のアコースティックギターを弾いたのが最初です 。
ただ、当時はそこまで夢中になるわけではなく、暇な時に少し弾く程度でしたね 。
イ: 本格的に音楽の道に進んだのはいつからですか?
細貝: 沖縄の大学に入学してからです 。そこでパーソナリティのズケヤマセイラさんとも出会いました 。
それまでは高校の軽音楽部で、モテたくてバンドを組んだくらいで、ごく普通の音楽好き少年でしたね 。
イ: 学生時代、一番興味があったことは何でしたか?
細貝: エッチなお姉さんです 。僕の人生は昔から「スケベと音楽」の二本柱で、これは今もぶれない軸ですね 。
ニート、持病、挫折…絶望の淵にいた20代
イ: 大学卒業後、すぐに音楽の道に進まれたのですか?
細貝: いえ、実は僕、社会経験が本当にゼロなんです 。大学卒業後、沖縄で映像照明の会社に就職しましたが、幼少期からの持病であるトゥレット症候群の症状が出てしまい、NGを連発してしまいました 。それが原因で、もうダメだと心が折れて東京に帰りました。
イ: 東京に戻られてからは?
細貝: コンビニでアルバイトを始めましたが、そこでも緊張で症状が出てしまい、プライドがズタズタになりました 。結局、電話一本で辞めてしまい、それが僕の最後の社会経験です 。
その後、保育の専門学校にも通いましたが、ニート期間が長すぎて朝起きられず、半年でドロップアウトしました 。20代は、すべてから逃げ続けてきたんです 。
イ: その頃は音楽活動も?
細貝: 全くしていませんでした。沖縄から持ってきた楽器も全部売り払い、音楽を聴くくらい。実家が裕福だったので何とか生きていけましたが、2〜3年は昼夜逆転の暗い生活を送っていましたね 。
転機はマッチングアプリ?絶望からの再起
イ: そこから、どうやって現在の道につながっていったのでしょうか?
細貝: きっかけは、マッチングアプリです 。
ニートで時間はあったので、プロのマッチャーを自称するほどやっていて(笑)。定期的に会う女性が5人くらいいて、その日のデート相手や場所によって気分が変わるので、「自分だけのBGMが欲しい」 と思ったんです 。
それでMacBookで曲を作り始めたのが、音楽制作の始まりですね 。
イ: 人生の二本柱がここで繋がるわけですね!
細貝: まさに「性欲」が原動力です 。
もう一つ幸運だったのは、祖父が元々布団屋を営んでいた場所を使わせてもらえたことです 。
東京で音を出せる場所があるというのは本当に大きくて、僕の音楽スキルが上がったタイミングと場所があったことが重なり、少しずつ仕事になっていきました。
イ: 音楽の道に進もうと決意したわけではなく?
細貝: そうなんです。初めてシンガーソングライターの曲を作って7000円をもらった時、「これで行くしかないのかな」と思いました 。
大きな夢があったわけではなく、資格も働く意欲もない僕に残されたものが音楽スキルしかなかった。消去法でこの道を選んだのが正直なところです。
「遊び心」と「こだわりを持たないこだわり」
イ: 現在の仕事で、たまらなく面白いと感じる瞬間はどんな時ですか?
細貝: 僕の仕事は裏方なので名前が出ることは少ないですが、自分が手がけた音楽がアニメやコンビニのCMなどで使われているのを発見した時ですね 。
自分の仕事が目に見える形で世に出ているのを見ると、脳内で何かが出ます(笑)。
イ: 逆に、仕事をする上で大切にしている価値観はありますか?
細貝: 「喜ばない、悲しまない」 ということです 。仕事の結果に一喜一憂していると、パフォーマンスが左右されてしまう。だから常にフラットな気持ちでいることを心がけています 。
もう一つは「こだわりを持たない」というこだわりです 。
職人肌にならず、お客さんの要望に柔軟に応えたい。演歌でもクラシックでも、どんなジャンルでもやります。
イ: その価値観には、沖縄での経験も影響していますか?
細貝: ものすごく影響していますね。特にズケヤマセイラさんがステージでいつも「一緒に遊ぼうぜ」と言っていたように、音楽で「遊ぶ」という姿勢は叩き込まれました 。
ゴミ箱に頭から入れられたり、髪を燃やされたり…今では考えられないようなメチャクチャな日々でしたが(笑)、
あの経験が心の器を大きくしてくれました。
あのエンターテイナー精神が今の仕事に完全に結びついています 。
ニートから社長へ。未来の展望
イ: 今後、挑戦してみたいことはありますか?
細貝: 法人化して会社にすることです 。ありがたいことに今は忙しくて、お断りせざるを得ない仕事があるのが心苦しい。
仲間を増やして、もっと多くの依頼に応えられるようになりたいです。あと、社長ってかっこいいじゃないですか。
イ: 個人的な夢はありますか?
細貝: 自分の音楽の能力だけで稼いだお金で、一戸建てを買うことです 。
10年前はハイパーニートだった自分が、ここまで来れた。10年先はもっとワクワクすることが待っているんじゃないかと信じています 。
イ: 最後に、かつての細貝さんのように悩んでいる若い世代へメッセージをお願いします。
細貝: 自分の悪いところにばかり目が行きがちですが、自分の良いところもちゃんと認めてあげることが大事だと思います 。
そして、悪いところは隠すのではなく、「どうやって面白く見せるか」 を考える 。
僕もたくさんのハンディキャップがありましたが、「でも、こんなに面白い人間じゃないですか」と今は自信を持って言えます。
自分を客観的に見て、認めてあげてほしいです 。
イ: 本日は貴重なお話をありがとうございました。
細貝: ありがとうございました。
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