ミラクルモンスターはユニークな経歴や珍しいお仕事をしている方をゲストにお招きし、その道のりや考え方、夢中になっていることをとことん伺い、リスナーの皆さんと一緒に勝手にワクワクして応援していく番組です。
パーソナリティは、ズケヤマセイラ、崎山夏紀、宮城拓真、まえうみさきこです。
ゲストのプロフィール

- ゲスト名:東 理人(ひがし りひと)
- プロフィール:心臓血管外科医を副業とし、黒糖屋さんを本業として活動されています。沖縄県在住7年目。みんなからはリッヒー、またはリッヒーさんと呼ばれています。
- URL:
X-りっひー@心臓血管外科医、自然黒糖屋さん https://x.com/rihitohigashi
X-感性医の寺子屋 https://x.com/inoterakoya
Instagram https://www.instagram.com/rihito_higashi
珊瑚黒糖ホームぺージ https://sangokokuto.com/
イ:さあ、ここからはお待ちかね、本日のミラクルモンスター、東理人さんをお迎えして始めてまいりたいと思います。よろしくお願いします。
東:よろしくお願いします。
イ:早速ですが、まずはリスナーの皆さんに、今どんな活動をされているのか自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。
東:初めまして、東理人と申します。みんなからは「りっひーさん」とかと呼ばれています。僕は今沖縄県に住んで7年になりますが、那覇で心臓血管外科医をしています。その傍ら、「サンゴ」という糸満の黒糖をプロデュースし、皆さんに届ける仕事をしています。
医師への道のりと人生の転機
イ:心臓血管外科医でありながら、黒糖屋さんもされているのですね。そもそも子供の頃はどんなことに興味を持っていたのですか。
東:もうごく普通の子供で、小学校5年生から大学までずっと野球をやっていました。転機が訪れたのは高校3年生の時です。将来をふと考えたのですが、それまで成績は下から数えた方が早いぐらい頭が悪く、将来に絶望を感じていました。そんな時、スポーツ関係の仕事に就きたいとおぼろげに思っていたら、当時の師匠のような人に「医者になって整形外科医になったらいいんじゃないか」と言われて、そこでスイッチが入ったんです。
イ:偏差値40を切る状況から、医者になることを決めたのですね。
東:そうです。なるって決めたんです。何年かかってもいいから、なってる自分から逆算して、足りないものを補っていこうと考えました。高校3年生の時は受験をスルーし、浪人して予備校に通いました。
イ:その間、どれくらい勉強されたんですか。
東:もう1日17時間していましたね。寝ている時以外はほとんどです。実家のフローリングが椅子のせいで剥げるくらい勉強しました。
イ:その後、一度は京都の同志社大学(理工学部)に進まれたんですよね。
東:はい、親に言われて受けたら受かったのですが、半年で「やっぱり医者になりてえ」となって、全てを投げ出して辞めました。翌年、二浪で大阪の私立の関西医科大学に入学しました。
イ:医師として10年間働かれた後、「これが大きな転機だった」と思える出来事や決断があったと伺いました。
東:医者10年目で一旦全てを捨てて、家族と日本一周の旅に出たことです。当時は激務で子供の顔も見れないような生活を送っていて、少し燃え尽きていたんです(バーンアウト)。人生をリセットしたいと思い、勤務先の病院や大学医局を全て辞めました。日本一周の旅に出た時は、ワクワクしかありませんでした。
心臓外科医という職人技

イ:整形外科を目指していたのに、なぜ心臓外科を選ばれたのですか。
東:医学部で全ての分野を勉強する中で、臓器別に見ると循環器(心臓や血管)が一番面白かったんです。僕は外科系の人間だと思っていたので、循環器と外科を組み合わせて、心臓血管外科を選びました。心臓って頑張って動いていて、すごく「生きてる」って感じがして、綺麗でかっこいいんですよ。
イ:心臓外科医は天才がやっているイメージがあり、技術を習得するのは大変そうですが。
東:外科系は職人なんです。大工や建築業界と同じように、先輩から技術を盗み、それを積み上げて、自分なりにアレンジして表現していくものなんです。
イ:手術の練習はどのようにされるのですか。
東:常に練習しています。一つは実際に手を動かす練習で、心臓外科では縫う技術が大事なので、縫う練習は常に行っています。もう一つはイメージトレーニングが大きいです。手術の前に、情報を揃えて頭の中でずっとシミュレーションを組み立てています。3日前とかから食事中もずっと考えていますね。
イ:縫う練習はティッシュを使われていると聞きました。
東:そうです。ティッシュは破れやすいので、ティッシュを1枚にして縫う練習をしています。そうすることで、繊細な作業の練習になります。
イ:手術中、「戻れない状況」になった時に泣きそうになることがあると伺いました。
東:めちゃくちゃ怖いですね。予想外の出来事が起こると頭の中が真っ白になります。でも、自分が真っ白になったら進まないので、そこでいかに進めるかですね。そうならないように、準備を相当怠らないようにしています。悪い想像、つまり「こうなった時はこうしよう」という最悪のケースを想定してシミュレーションを重ねています。
イ:お仕事をする上で大切にしている価値観はありますか。
東:「世界には自分より優秀な医者が必ずいる。だから自分のところに来た患者はそれだけで不幸である。だから自分はその患者のために全力を尽くさないといけない」という座右の銘を大切にしています。
ライフスタイルと仕事への考え方
イ:お医者様はもうずっと病院にいるイメージですが、先生は違うと。
東:僕、それがすごく嫌いで(笑)。すぐ家に帰ります。うちの病院は8時半始業ですが、8時半ギリギリに行って、夕方5時には帰ります。アルバイトぐらいの感じですね。もちろん、患者さんが不安定な時は食事をしてからまた見に行ったりはします。
イ:週末はしっかり休めているのですか。
東:週末遊ぶために、手術を決めるような戦略を立てています。月曜日に手術をして、木曜日ぐらいにはICUを出てピンピンしているのが理想です。
イ:そのようにライフスタイルをコントロールできるようになったのは、日本一周の旅の後なのですね。
東:はい。以前は、働き詰めで疲れてしまっていたので。
日本一周の旅と沖縄での新たな挑戦
イ:日本一周の旅はどのようにされたのですか。
東:仕事をしてなかったので、安くあげようとキャンプしながら、各地方に1ヶ月ずつ行きました。一旦京都の仮拠点に帰って、また次に行くというやり方で、5箇所ぐらい行きました。疲れるのが嫌だったので、温泉がついているキャンプ場を選んだり、かなり綿密な計画を立てていました。
イ:その旅の後に、なぜ沖縄に移住されたのですか。
東:実は沖縄に来たのは、日本一周とは関係ないんです。旅を終えた後、京都で健康産業の分野で起業しようと勉強していたのですが、知識が足りずうまくいきませんでした。そこで、心臓血管外科に戻ろうかと思い、昔の大学病院の先輩に相談したら、たまたまその先輩が今の病院にいて、沖縄に誘ってくれたんです。ちょうど子供が小学校に上がるタイミングと重なったので、2018年に沖縄に移住しました。
イ:沖縄に来て、黒糖に出会ったのは。
東:医者に戻った後も企業にアンテナが向いていたので、糸満の黒糖に出会ったんです。黒糖作り体験会に行って、それが面白くて。その黒糖が「薬になる黒糖」というキャッチコピーで、栄養価が高くミネラルが豊富だと知り、健康を維持するようなものとしてビビっときました。

イ:黒糖の活動もされているのは、科学的な西洋医学があまり好きではないという考えからですか。
東:そうです。なるべく手術をして薬が減ればいいなと思っているので、自然の食品を大切にしたいと思っていました。当時、その黒糖は作り手の高齢化が進み販売の危機でしたので、お手伝いしたいと思い、生産者の方とディスカッションを重ねて、パッケージや値段設定を見直し、販路拡大をしていきました。
現在の活動、挑戦、そして未来への展望

イ:今のお仕事や活動で「たまらなく面白い」と感じる瞬間や、「一番のやりがい」はどんな時ですか。
東:やはり、自分の手で治した患者さんが良くなった時です。患者さんの症状が取れたり楽になったりすると、めちゃくちゃ嬉しいですね。医療の原点は「困った人」から始めるべきだと僕は思っています。
イ:現在、特に力を入れている活動はありますか。
東:2つあります。一つは、「感性医の寺子屋」という座談会を毎週木曜日の22時半からXのスペースでやっています。コロナ禍に疑問を持った全国の医師仲間と、医療の話題や最新の薬事情、ワクチンのことなどを語っています。エビデンスよりも感性で動く医師の集団を作りたいという意味でこの名前をつけました。
東:もう一つは、去年から腹膜透析の分野に力を入れ始めたことです。日本では血液透析が97%を占めていますが、腹膜透析は自宅でできる透析システムで、効果はほぼ変わらないのに非常にマイナーなシステムです。
イ:腹膜透析は、将来に向けてどんな目標がありますか。
東:システムが簡単でコストがあまりかからないため、将来は発展途上国に腹膜透析を普及させる仕事をしたいと思っています。
イ:最後に、キャリアに悩んでいる方や、これから何かを始めようとしているリスナーにアドバイスをお願いします。
東:まずは「リーンスタートアップ」でいきましょう!そして、先に決めてしまうのが大事かなと思います。医者になることを決めたのも、腹膜透析を導入したのも、「これやる」と決めて、未来のスタートする日に向けてチームを作る、という考え方なんです。決めてしまえば、あとは帳尻を合わせるだけです。
イ:東さん、本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
東:ありがとうございました。楽しかったです。