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【インタビュー】オタクからアニメーター、そして沖縄唯一の出張靴磨き職人へ――仲程秀之氏の異例のキャリアパス


NPO法人Mirai Kanaiがお届け!ミラクルモンスター:沖縄唯一の出張靴磨き職人、仲程秀之氏のキャリアに迫りました!
(パーソナリティー:ズケヤマセイラ・宮城拓真)


本日のゲストは、沖縄で新しいスタイルの出張靴磨きサービスを提供されている仲程秀之さんです。

ゲスト プロフィール


ゲスト名
仲程 秀之(なかほど ひでゆき)

プロフィール
2017年4月より、沖縄で店舗を持たない出張靴磨き専門サービス「SHOESHINE FACTORY」をスタート。
前職は革靴の接客販売で、アフターフォローとして行っていた靴磨きでお客様に大変喜ばれたことから、靴磨き(シューケア、シューシャイン)の奥深さに魅了され独立を決意。
靴をきれいにすることで、日常にささやかな幸せと笑顔を届けることを目指しています。

ホームぺージ・SNS
SHOESHINE FACTORY
ホームぺージ https://ssf-okinawa.com/
Instagram https://www.instagram.com/hideyuki_nakahodo


オタクからアニメーター、そしてアパレルへ


イ:NPO法人Mirai Kanaiがお送りするミラクルモンスター、本日のゲストは仲程さんです。本日はよろしくお願いいたします。

仲程:よろしくお願いします。仲程さんのユニークなキャリアを深掘りしていきたいのですが、まず子供の頃や学生時代はどのようなことに夢中になっていましたか?

仲程:今の活動につながるようなことはほぼないですね。ただのオタクでした。漫画を読み漁り、アニメを見まくり、友人の家に押しかけてゲームで遊び倒すような子供でした。

イ:そのオタク気質が、社会に出て最初に選んだお仕事につながるんですね。アニメーターだったと伺っていますが、何をされていたんですか? 仲程:絵を描いたり、絵を動かす仕事をしていました。時代的には鉛筆と紙を使った手書きの作業でした。有名どころだと、海外向けのアニメや、日本でいうなら『遊戯王』や『ポケモン』などのメジャー作品の、いわゆる下請け会社のような形で、部分部分を手伝っていました。

イ:アニメーター時代は厳しかったようですね。

仲程:はい。才能がない分、時間かけないと終わらず、徹夜も日常茶飯事でした。クオリティが低いと差し戻され、最悪の場合は目の前で破られることもありました。時間がないため、食事もままならず、人生の底を経験しました。ただ、この「底」を知った経験は、現状どんな逆境が来ても「あれよりはマシだ」と思える点で今に生きています。

イ:そのアニメーターの仕事を3年で辞められた後、次は何をされたのですか?

仲程:その後はアパレルです。夢破れて家賃も払えなくなりそうだった時に、たまたま見つけたアルバイトがアパレルでした。絵を描いていた頃に比べたら、時給が800円や900円でも神のように感じました。


厳格な上司との出会い:社会人としての基礎を築く

イ:アパレルのお仕事はどのくらい続けられたんですか?

仲程:東京で2年半から3年ほどアパレルをやっていました。その後、花粉症を発症したこともあって、沖縄に戻ってきました。

イ:アパレルでの経験が、その後の仲程さんのキャリアにとって重要だったようですね。

仲程:はい。特にそこで出会った上司には、生まれて初めて人間にしてもらったと思っています。アニメーター時代は社会人としてのルールやマナーが全くなかったのですが、その上司にボコボコに叩き込まれました。

イ:具体的にどういう指導だったんですか?

仲程:上司は私に「今日から3カ月間、とにかく俺についてこい」と言い、指示通りに行動しました。指示待ちの状態から、3カ月後に急に離され、自分で考え行動しようとすると、すべてケチョンケチョンに直されました。まるで絵描きの頃と同じような状況でしたが、ベースに何のプライドも経験もなかったので、受け入れることができたんです。その上司は、従業員の見えないところで一番しんどい作業を自らやったり、私が残業している時に帰る時間になっても待っていてくれたり、後で気づく優しさを持った人でした。

イ:大変だったけれど、結果的には楽しかったんですね。

仲程:なんだかんだ言って、楽しかったですね。接客経験がなかったからこそ、逆に経験がないことを正直に伝えて、お客様から「こんなことした方がいいよ」と教えてもらうこともありました。


靴磨きとの運命的な出会いと2017年の独立


イ:沖縄に戻ってきてからもアパレルを続けられたんですよね。そこからどうやって靴磨きという道に進まれたのでしょうか?

仲程:独立する前のセレクトショップで、靴の販売を担当していました。靴を売るために一生懸命、お手入れの方法を含めて勉強するうちに、靴磨きの奥深さに魅了されました。

イ:それがきっかけで、社内でイベントを企画されたと。

仲程:はい。靴のお手入れをイベントにしたらどうかと企画書を提出したところ、GOサインが出ました。そのサービスを提供したお客様が、うちの店にずっと通っていただいている感謝を込めたキャンペーンだったため、料金はいただかなかったのですが、「ありがとう」と、後で差し入れを持って戻ってきてくれるなど、すごく喜ばれたんです。こんなに喜ばれるのかという衝撃が、靴磨きを始めた一番大きなきっかけです。

イ:そして、2017年に独立を決意された。何か大きなきっかけがあったのですか?

仲程:独立するつもりはなかったのですが、近隣の金融機関がやっている「コザ創業スクール」があることを知り、試しに副業として行ってみようと思いました。そこで習ったことを会社にフィードバックし、自分も報酬が上がる可能性があるかと考え、会社に提案したんです。

イ:会社側はどのような反応でしたか?

仲程:会社側は副業を認めませんでした。それが、独立を決めた理由の一つです。社長からは引き止められましたが、2017年4月に沖縄で新しいスタイルの革靴のお手入れ専門サービスをスタートしました。


独自の価値観:「靴が生き返った」というお客様の笑顔


イ:現在の出張靴磨きのお仕事で、たまらなく面白いことややりがいを感じる瞬間は何ですか?

仲程:独立したことそのものによって、サラリーマン生活では出会わなかったであろう人や物事に出会えているのが一番面白いですね。過去の自分より上手く、速くできたときにもやりがいを感じます。

イ:特に印象に残っているお客様のエピソードはありますか?

仲程:最近では、亡くなられたご主人の靴(形見)を何十年も保管した後、お手入れのご依頼をいただいたことがあります。また、水害支援として、水没してしまった熊本の靴を沖縄に送ってもらい、みんなで綺麗にしてお返しするというボランティア的な活動もしました。独立しないと絶対に出会えなかったストーリーです。

イ:一方で、この仕事ならではの大変さや難しい点はありますか?

仲程:サービスそのものがニッチなので、まだまだ認知度やリアルが足りていません。常に人の足元を見る、仕事を探してひたすら動き回る「修羅の道」です。

イ:お仕事をする上で、譲れない価値観や大事にしていることはありますか?

仲程:起業してすぐに教えてもらったのですが、「あなたの思っている70%が、お客さんの100%の可能性がある」ということです。私は職人気質でやりすぎるタイプなので、常に100%を尽くさないとダメだと思い込んでいました。しかし、お客さんが気づかないレベルで自己満足の100%を目指すより、70%や80%で一旦止めて、その代わりより多くのお客さん(例えば2人ではなく10人)を相手にする方が、結果的に成長すると学びました。


10周年を目指す「修羅の道」と「靴の心」をケアする専門家

イ:多くのお客様と接する中で、革靴の定義について考えさせられることはありますか?

仲程:はい。「革靴」といえば、結婚式などに履いていく靴だとしか思っていない人がめちゃくちゃ多いです。でも、女子高生が履くローファーも、新卒の女性が履くパンプスも、シックなスニーカーでも、革であれば「皮革靴」です。思い込まずに、一度ご相談いただきたいですね。スエードでも大丈夫です。

イ:仲程さんの考える靴磨きの本質は何でしょうか?

仲程:お客さんがよく「靴が生き返った」と言ってくださるのですが、これは靴を生き物として捉えているということです。靴は「人間の体の一部」の延長線として捉えられがちなんです。靴という物体をお手入れしているというよりも、その靴を使ってらっしゃるお客さん自体をケアしている部分もあると思っています。

イ:現在、最も挑戦してみたいことや目先の目標について教えてください。

仲程:目先の目標は、とりあえず10年間やりたいということです。今が9年目に入るところなので、なんとか10周年までは生き延びたいですね。

イ:その10周年に向かう中で、特に力を入れている活動はありますか?

仲程:来月、初めて試みることですが、お客さんからお金をいただいて「お茶会」をやってみようと思っています。靴は磨かず、おしゃべりだけでお客さんを呼べるのかどうかを試してみたいんです。

イ:ありがとうございます。最後に、リスナーへメッセージやアドバイスをお願いします。

仲程:私の仕事は、とにかく仕事を探しに行かないと立ち止まったら死ぬという「修羅の道」なので、正直お勧めはしません。ただ、もし何か挑戦したいなら、AIにどんどん相談してみるのも良いかもしれません。

イ:仲程さん、本日はお忙しい中ありがとうございました。 仲程:ありがとうございました。

イ:本日のゲストは出張靴磨き職人の仲程秀之さんでした。仲程さんの活動は、
Instagram https://www.instagram.com/hideyuki_nakahodo
SHOESHINE FACTORY https://ssf-okinawa.com/ からチェックできます。


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