番組概要
NPO法人Mirai Kanaiがお届けするラジオ番組「ミラクルモンスター(通称:ミラモン)」。 ユニークな経歴や珍しいお仕事をしている方をゲストにお招きし、その道のりや考え方、夢中になっていることをとことん深掘りして、リスナーの皆さんと一緒に勝手に応援していく番組です。
本日のゲスト紹介
キャンヒロユキさん :放送作家・脚本家・CMプランナー。 メディアの第一線で放送作家や脚本家、CMプランナーとしてマルチに活動される傍ら、エンタメに特化したITプロダクトの開発も手がけられています。

ゲストプロフィール
中学生時代に「ダウンタウン」の漫才に衝撃を受け、エンタメの世界へ憧れを抱く。琉球大学数学科に在学中、オーディションを受けたことをきっかけに沖縄初の放送作家としてキャリアをスタート。卒業後はさらなる修行のため東京のNSC(吉本総合芸能学院)へ入所し、お笑いの最前線でスキルを磨く。現在は『ひーぷー☆ホップ』などの人気番組を担当する傍ら、星槎国際高校で数学の授業も受け持つ。近年は「笑いのSDGs」を掲げ、観客の笑顔を可視化するITプロダクト『lolup(オーエンサー)』や、沖縄特化の放送作家AIの開発にも挑戦中。 WEBサイト: https://lollol.co.jp/
インタビュー本編
放送作家ってどんな仕事?プロデューサーや演出家との違い
イ(インタビュアー):本日のミラクルモンスターは、放送作家のキャンヒロユキさんです!まずは、放送作家とは具体的にどのようなお仕事なのか教えていただけますか?
キャン:テレビやラジオって、芸人さんや出演者が好き勝手しゃべるわけではなくて、ある程度「どんなことを話すか」を決めたり、面白いコーナーを作ったりして流れを作るんです。それが放送作家の仕事ですね。今だと19年目になる『ひーぷー☆ホップ』や、YouTubeの『ファミチキTV』の台本を書いたり、演出的なアドバイスをしたりしています。
イ:なるほど。プロデューサーやディレクター、演出家とはどう違うのでしょうか?
キャン:よく聞かれますね。わかりやすく料理に例えましょう。演出家は「コック長」です。全体をこんな味付けにしよう、こんなソースにしようとルールを決める人ですね。そして、実際に料理を作る料理人が「ディレクター」です。それぞれが自由に作ると味がバラバラになるので、演出家が統括しています。 一方でプロデューサーは、予算の管理やスポンサーとの調整など、全体を統括・管理する人です。 僕ら放送作家は、料理人(ディレクター)が料理を作るときに「こういうレシピで作ってみたら?」と中身や企画を提案する仕事ですね。昔はディレクターが台本も書いていましたが、間に合わなくなって分業化されたのが始まりです。
幼少期の英才教育と、ヤンキーから逃れるための中学受験
イ:すごく分かりやすいです!キャンさんは子供の頃、どんなことに興味を持っていたんですか?
キャン:親が結構、勉強を進めるタイプでして。小学校1年生の時に、2〜3年生の内容を先回りしてやらせるような環境でした。本はいくらでも買ってくれたんですが、普通の漫画はダメで「学研の漫画ならいい」と。だから欄外の豆知識まで全部読んで覚えていましたね。
イ:そこからどうやって放送作家への道を歩み始めたんでしょう?
キャン:実は小6の時、地元の中学生のヤンキーに捕まって「来年お前が中学に入ってきたら毎日呼ぶからな」と絡まれまして(笑)。これはヤバいと思って、当時1期生を募集していた私立の昭和薬科中学校を受験したんです。先輩がいないので天国でしたし、何より全沖縄から地頭の良い、回転の早い奴らが集まっていて、会話のテンポが早くて面白かったですね。
「沖縄初」に惹かれて飛び込んだ放送作家の世界
イ:そこから琉球大学の数学科へ進まれたんですよね。
キャン:ええ。将来の夢もなくて、大学の4年間で決めればいいやと思っていました。そんな大学2年の時、お笑い事務所(FEC)が放送作家募集のオーディションをやっていたんです。「沖縄で放送作家をやりたいっていう変なやつが来たぞ」と驚かれましたが、「沖縄初」という言葉に惹かれて飛び込みました。
イ:最初は順風満帆でしたか?
キャン:全くです。テレビ局やラジオ局に売り込んでも「放送作家って何ですか?」と言われる時代で、仕事があってもギャラは月数千円程度でした。でも、親が「バイトする暇があるならいろんな経験をしなさい」とご飯を食べさせてくれたおかげで、なんとか続けられましたね。ちなみに、のちにピザーラの配達バイトもしたんですが、それはバイクの移動時間中ずっとネタを考えられるからでした(笑)。
東京NSCへの挑戦と、中央で学んだこと
イ:その後、東京のNSC(吉本総合芸能学院)に行かれたんですよね。
キャン:はい。当時の沖縄のお笑いは冬の時代で、漫才のギャラが「ビール1ケース」なんてこともありました。これでは待っていても仕方ないと思い、修行のために東京のNSCへ行きました。
イ:東京での経験はどうでしたか?
キャン:東京のお笑いも、意外と手が届くものだと感じましたね。NSCに入った時、僕は「放送作家志望だけどコースがないから芸人をやります。台本もネタも書けるので誰か組みませんか」と猛アピールしました。沖縄から来たからには、何か持ち帰らないと恥だと思って、バンバン手を挙げて自分を売り込んでいましたね。
イ:そこで得たものは何だったのでしょうか?
キャン:一番大きかったのは「自分を売り込むことの重要性」です。ある時、作家の先生に言われたんです。「企画力が同じなら、小綺麗な格好をしている人に仕事をお願いするよ」と。企画力だけでなく、身なりや見せ方も大事なんだと学びました。ただ、先生同士の派閥争いのような中央のしがらみも見てしまって、沖縄にお笑いのスキルを持ち帰ろうと決意して戻ってきました。
沖縄帰郷後の地道なアピールと、チャンスを掴むスピード感
イ:沖縄に帰ってきてからはどうでしたか?
キャン:状況は行く前と変わらず、放送作家なんてほぼいませんでした。最初はOTVの番組で幕を開け閉めするバイトをしていましたね(笑)。でも、オリジンという事務所で月に1回ネタ見せをさせてもらえるようになり、ゴリゴリと自分を売り込みました。
イ:どんな風に売り込んだんですか?
キャン:ある時、制作会社のプロデューサーを紹介されて「今度企画考えてよ」と軽く言われたんです。僕は挨拶を終えて部屋を出た後、すぐに事務所の隅っこで台本を書き、1時間後に企画を3本FAXで送りました。相手は困惑していましたが(笑)、「今回は違うけど、絶対に仕事振るから」と言ってくれて、半年後に本当に正式な仕事が来ました。『沖縄の怖い話』の台本も、同じように自分から電話して掴み取った仕事です。
『ひーぷー☆ホップ』の裏側と、仕事のやりがい・大変さ
イ:現在のお仕事で「たまらなく面白い!」と感じる瞬間はどんな時ですか?
キャン:長く関わっている『ひーぷー☆ホップ』で、視聴者からのメールを誰に読ませるか振り分けるんですが、その「化学反応」が起きた時ですね。例えば、ひーぷーさんいじりのメールをあえて別の出演者に読ませてリアクションを引き出したり。自分が仕掛けたダイナマイトの横に焚き火を置いておくような感覚で、狙い通りにドッカーンとウケて、スタッフも大笑いしている空間にいるのが最高に楽しいです。
イ:逆に、この仕事ならではの大変さは?
キャン:県の案件などで、クライアントや代理店のフィルターが多く、真逆の修正が何度も入る時は大変ですね。でも、僕は「ラーメンを作れ」と言われたらちゃんとラーメンを作ります。相手の要望を叶えつつ、「こんなアレンジを乗せたらもっと跳ねますよ」とプラスアルファの提案をしていくように心がけています。
大切にしているモットーと、エンタメにおける「共有」
イ:仕事や人生において、大切にしているモットーはありますか?
キャン:「lots of laughs, lot of love!(世界の笑いと笑顔を世界中に届け、より幸せな世界を創る)」です。売上などのビジネス面も大事ですが、それ以前に、関わる人と楽しんで「キャンさんと繋がってよかった」と思ってもらえることを大切にしています。
イ:エンタメへの熱い思いを感じます。
キャン:エンターテインメントって、無償の愛みたいなものだと思うんです。人を楽しませる、笑わせることに自分たちも喜びを感じる。その感動を「共有」することが一番の喜びですね。
笑いを可視化するITプロダクトと、放送作家AIの開発
イ:今後はどのようなことに挑戦していきたいですか?
キャン:今、ITプロダクトの開発に力を入れています。コロナ禍でオンライン配信になった時、芸人たちが「客が笑っているか分からない」と悩んでいたのを聞いて、視聴者の笑い声を感知して会場に響かせる『lolup』というシステムを開発しています。 また、リアルなライブ会場で、モニターにアニメーションを出して応援できる『オーエンサー』というシステムも進めています。 さらに、後輩を育てる一環として、AIと壁打ちして沖縄のロケ企画などを一瞬で出してくれる「沖縄特化の放送作家AI」も作りました。これも皆で使えるようにしたいですね。
若い世代へのメッセージと、数学と放送作家の意外な共通点
イ:最後に、進む道に悩む若い世代へメッセージをお願いします!
キャン:仕事選びでは「やりたいこと」「給料がいい」「ちゃんと休める」という3つのうち、まずは2つを満たしていればOKだと考えてみてください。そこから頑張っていけば、いつか足りない1つも補えるかもしれません。 僕自身、大学時代に数学の教員免許を取っていて、「33歳までは教員採用試験を受けられる」という良い意味での保険をかけていたからこそ、ワクワクしながらチャレンジできました。撤退やピボット(方向転換)は決して恥ずかしいことではありません。100か0かで考えず、勇気を持って挑戦してみてください!
イ:えっ、キャンさんは数学の先生もされているんですか?
キャン:そうなんです。今でも星槎国際高校で週に1回、数学と表現の授業を教えています。放送作家と数学って真逆に見えますが、数学は論理学なんです。相手に分かりやすく順序立てて説明する構成力は、台本作りにもすごく役立っているんですよ。
イ:最後に告知があればお願いします!
キャン:『ひーぷー☆ホップ』をぜひご覧ください。あと、ROK(ラジオ沖縄)で『作家上等』という番組をやっています。放送作家や脚本家が集まって、リスナーからの企画依頼に答える番組なので、X(旧Twitter)で「#作家上等」で調べてみてください!
イ:キャンさん、本日は本当にありがとうございました!
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